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有機溶剤系接着剤について

有機溶剤系接着剤の危険性と法律で定められたルール
~有機溶剤系接着剤のリスクと罰則について~

この記事は、革を扱うすべての皆さまに読んでいただきたい内容です。

こんにちは。ニッピ機械です。
皆さまは普段の製作で、どんな接着剤をお使いでしょうか?

「乾きが早くて強力に接着できるから」と、有機溶剤系の接着剤を長年使い続けている方も多いと思います。確かにその利便性は魅力的ですが、有機溶剤系接着剤は「便利さ」と引き換えに、私たちの健康や作業環境に深刻なリスクをもたらす可能性があるのです。

今回は、あらためて 有機溶剤系接着剤の危険性と法律上の罰則 について、詳しくお伝えしたいと思います。


有機溶剤系接着剤とは?

革工房や靴工場でよく使われる「ゴムのり」や「ラバーセメント」などに代表される接着剤。
その主成分には、トルエン、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサン といった揮発性の有機溶剤が含まれています。

特徴は乾燥が早く、強い接着力を発揮すること。
一方で、溶剤が気化して空気中に広がり、それを吸い込むことで人体に悪影響を与えます。


有機溶剤の危険性

  1. 健康への深刻な影響

揮発した溶剤を吸い込み続けることで、以下のような症状が現れることがあります。

  • 頭痛、吐き気、めまい、倦怠感
  • 集中力の低下、手足のしびれ
  • 長期間の使用で肝臓・腎臓への障害
  • 中枢神経へのダメージによる「有機溶剤中毒」

一度ダメージを受けた神経は、元に戻らない場合もあります。
実際に、長年接着作業を続けてきた職人さんの中には、めまいや記憶力低下に悩まされている方も少なくありません。

  1. 火災・爆発のリスク

有機溶剤は非常に揮発しやすく、空気中に充満すると爆発的に燃え広がる危険があります。

  • ライターの火
  • 静電気
  • スイッチの火花

こうしたわずかな火種から大規模な火災につながることも。
「小さな工房だから大丈夫」という油断が、取り返しのつかない事故につながるのです。

  1. 周囲への影響

作業者本人だけでなく、工房に出入りする家族や従業員、さらには隣接する住居や店舗にまで溶剤の臭気が広がり、トラブルの原因になることもあります。


法律で定められたルール

「体に悪い」というだけでなく、有機溶剤の使用は法律でも厳しく規制されています。

  1. 労働安全衛生法(有機溶剤中毒予防規則)
    • 換気設備の設置や作業主任者の選任が義務
    • 作業環境測定を定期的に実施
    • 作業者には特殊健康診断を行う必要
  2. 消防法
    • 多くの有機溶剤は第4類危険物に指定
    • 保管量が一定以上になると届出義務が発生
  3. PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)
    • トルエンなどは対象物質で、排出量の把握と報告が必要

これらはすべて「事業所の規模にかかわらず」適用されます。小さな工房や個人事業だからといって免除されることはありません。


違反した場合の罰則

「うちは小規模だから関係ない」「知らなかった」では済まされません。
違反が発覚すれば、50万円以下の罰金や懲役刑 が科される場合があります。

  • 労働安全衛生法違反 → 使用停止命令・刑事罰
  • 消防法違反 → 保管禁止命令・罰金・施設の是正命令
  • 万が一労災事故が発生した場合 → 事業主責任が問われ、高額な損害賠償に発展する可能性も

つまり、「ルールを守らずに有機溶剤を使うこと」は、作業者の健康を奪うだけでなく、工房そのものの存続を危うくする行為なのです。


【警告】安全無視は命取りです!

「いつも使ってきた」「慣れている」――そんな理由だけで有機溶剤系接着剤を使い続けていませんか?
その選択が、命を守るための判断を自ら見落としている可能性があります。

ここでは、実際の事故例厚生労働省や専門機関のデータをもとに、危険性を伝えます。

実際の事故例:あなたの工房でも起こり得る

  1. 有機溶剤中毒:接着剤の蒸気を吸って倒れる

ある現場では、【第2種有機溶剤を含む接着剤(テトラヒドロフラン)】の蒸気を吸引した作業者が中毒症状を起こした事例があります。作業中、換気が不十分だったことが原因です。あんぜんサイト

  1. 揮発した溶剤が爆発の引き金に

室内で乾燥中の接着剤に含まれていた n-ヘキサン(65〜75%) の蒸気がライターの火に引火し、小規模な爆発事故が発生した現場も報告されています。あんぜんサイト

  1. 漏れた溶剤が引き起こす肺の炎症(化学性肺炎)

家庭用スプレー式接着剤でも有機溶剤を誤って吸ったことにより、化学性肺炎(息切れ、咳、発熱など)を起こすリスクがあるとされています。特にスプレータイプは霧状となり拡散しやすいため、換気不足で深刻な被害が生じる可能性があります。島根県公式サイト


厚生労働省データで見る、実態と傾向

  • 有機溶剤による中毒事例は、昭和50年代には年間186件(労災補償対象)、その後平成7〜18年には年間9〜33件と減少したものの、平成18年だけでも21件の中毒事例が報告されており、依然として発生している状況です。J-STAGE
  • 業種別では建設業における中毒発生率が高く、特にトルエンによる被害が多く報告されている一方、製造業でも根本的な危険は消えていません。J-STAGE
  • また、精神・神経障害、皮膚・粘膜障害、呼吸器障害、肝・腎臓障害など、有機溶剤中毒によって引き起こされる健康被害は多岐にわたります。東京OSHC
  • さらに、ベンゼンによる白血病トルエン・トリクロロエチレンによる脳萎縮/視力低下など、長期曝露が取り返しのつかない障害につながる実例も報告されています。東京OSHC

なぜこんなに危険なのか?

有機溶剤は一度体に取り込まれると、【急性症状(めまい・吐き気など)だけでなく、慢性症状(神経・肝機能の障害など)】を引き起こします。

しかも、皮膚を介して吸収されるリスクも高く、目や皮膚につくだけで全身に広がる怖さがあります。Sankyo

さらに、有機溶剤中毒予防規則で規制される化学物質はごく一部のみ。多くの新規溶剤が無制限に使われており、その安全性は未知数という現状もあります。東京OSHC


あなたの工房にも問われる、今すぐの対策

  1. 換気設備が機能しているか? 作業中の換気が不充分だと、室内に 揮発成分が蓄積して酸欠や中毒事故を招きます。
  2. 適切な保護具を装着しているか? マスク・手袋・換気フードの着用は基本中の基本。
  3. 作業環境測定と健康診断を定期的に実施しているか? 有機則ではこうした行為が事業者の義務です。
  4. 水性接着剤などの代替が検討できないか? 安全性を優先するなら、毒性の低い代替品の導入をぜひご検討ください。


    まとめ:便利の裏に潜む『見えない犠牲』

    有機溶剤系接着剤は確かに「使い勝手が良い」、しかしその裏には「健康」「安全」「法令遵守」のリスクが山積しています。

    • 実際に中毒や爆発などの事故が発生している。
    • 厚労省も減少傾向だと言いつつ、毎年のように事例を把握している。
    • 長く使えば使うほど、知らない間に体が蝕まれていく可能性が高い。

    便利を追い求める過程で、自分や大切な人の健康、そして工房の未来を犠牲にしていませんか?

    どうか今一度、使用中の接着剤や作業環境を見直してください。ご自身と大切な人の「未来」を守る一歩を踏み出しましょう。


    ニッピ機械では無害で安全性の高い水溶性接着剤(水性ボンド)を取り扱っております。

     

    ★製品の詳細・ご購入は [ニッピ機械公式サイト] よりどうぞ!


    次回「安全な水性接着剤の最新トレンドと使い方」について詳しくご紹介します。お楽しみに

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